薬局の現場で働く薬剤師の皆さん、毎日の調剤業務お疲れ様です。現役エリアマネージャーのあっきーです。
「調剤ミスをゼロにしたいけれど、忙しいとどうしてもヒヤリハットが起きてしまう…」と悩んでいませんか?
調剤過誤は、薬剤師の「注意力」や「意識の高さ」だけで防げるものではありません。
本当に大切なのは、「うっかりミスが物理的に起きない仕組み(動作のルーティン化)」を調剤工程に組み込むことです。
今回は、私が多くの店舗を巡回する中で見つけた、仕事ができる優秀な現場薬剤師がリアルに実践している「調剤ミスを防ぐ工夫5選」を徹底解説します。
今日のシフトからすぐに実践できる具体的なアクションばかりですので、ぜひあなたの薬局でも取り入れてみてください!
1. 脳の「自動操縦」を止める!五感を使う「声出し指差し確認」
毎日何十件もの調剤をこなしていると、脳が省エネモード(自動操縦状態)になり、目で見ているのに脳が認識していない「ルック・バット・シー(Lookbut see)」が起こります。これを強制的に止めるのが「声出し指差し確認」です。
ANAグループ(整備部門等)をはじめ、航空業界や産業界全般で標準運用されている「指差呼称(指差し呼称)」は、科学的実験データによってそのミス削減効果が証明されています。

指差呼称によるエラー率の低下に関する代表的な検証データは以下の通りです。
確認動作ごとの誤操作率(鉄道総合技術研究所の実証実験データ)
- 何もしない(見るだけ): 2.38%
- 呼称のみ(声出し): 1.00%
- 指差しのみ: 0.75%
- 指差呼称(指差し+声出し): 0.38%(エラー率が約 1/6、削減率約 84〜85%)
ミスが減るメカニズム
- 脳の活性化: 「目(視覚)で確認する」「指(身体動作)で指す」「耳(聴覚)で声を聴く」という複数の感覚を同時に使用することで、脳の大脳皮質を活性化させます。
- 自動操縦(ルック・バット・シー)の解除: 慣れた作業による「見たつもり・確認したつもり」の無意識な油断を断ち切り、強制的に意識を対象物へ集中させます。
単に目視するだけの場合に比べ、指差しと声を同時に出すことで誤操作率が約6分の1まで低下することが実証されています。
実践のタイミング
- 薬のバーコードを認証(監査システム)するとき
- PTPシートの割線や、10mg/20mgの数字を指差すとき
- 「〇〇(薬品名)5mg、30カプセル、ヨシ!」と声に出す
「少し恥ずかしい」「ベテランなのに大げさ」と思う必要はまったくありません。
新幹線の運転士や航空機のパイロットが必ず行っているように、「
2. 調剤機器は使えるものは全部使う!
調剤ミスで特に多いのが、人員的な思い込みで機器を使わないで起きるミスが多いです。
現在導入されている機器
①処方せんリーダー
⇒機械に処方せんを通すだけで文字をデータに直してくれる
②QRコードリーダー
⇒処方せんについているQRコードに処方せんの患者情報や処方内容が集約されており、読み込むだけでデータとして取り込める。
③入力監査システム
⇒処方せんリーダーの用に処方せんの文字をデータ化し、システム課のデータ監査者が入力に誤りがないか確認してくれる。一人薬剤師で入力や調剤を行なう時に有効。
④散剤監査システム(ラクチェ)
⇒散剤のデータが飛んできて用法用量が適正か判断してくれ、秤量のサポートをしてくれる。
⑤ピッキングサポートシステム(ポリムス)
⇒同様に処方せん入力後にピッキングするべき薬品名、ピッキング数、棚番などが出てきて、ピッキング時に対象薬品のJANコードを読み取る。合っていれば進むが、間違っているとPOPが出てくる。そのため、人員的な思い込みによるピッキングミスを防ぐことができる。
⑥自動分包機、自動散剤分包機、自動水剤分注機
⇒入力したデータを元にアームやユニットを駆使して秤量から分包までを機械が行なってくれる。薬剤師が一包化、散剤調製、水剤調製にあたらなくてよいので、人員削減や調剤ミス防止に有効。
◎ ミスを防ぐ正しい動作
- 入力は処方せんリーダー、QRコードリーダーを使用して手入力をしない。
- 入力後のデータは入力監査システムかダブルチェックで入力間違いを防止する。
- 薬品のピッキングにはピッキングサポートシステムを使用し、ピッキングミスを防止する。
- 散剤の秤量時は散剤監査システムを使用する。
- 自動で調製できる機械があれば使用し、空いた時間を処方監査や統合監査に時間をあてる。

【ポイント】
慣れてくると機械を使わない方が早いと思う薬剤師もいますが、その思い込みで調剤ミスを一度してしまうとその後の対応が大変になります。患者さんにお渡しする前に機器を駆使して調剤ミスを防ぎましょう!
3. 魔の時間帯を乗り切る!作業中断時は「完全リセット&目印」
外来が混雑している時間帯、調剤の途中で「電話が鳴る」「患者様に呼ばれる」「他スタッフから質問される」といった作業の
実は、ヒヤリハットの多くはこの「作業再開の瞬間」に発生します。
中断時の鉄則ルーティン
- 作業を途中のままにしない: 中途半端にシートをハサミで切った状態などで席を離れない。
- 必ず「目印」を置く: どうしてもその場を離れるときは、処方箋の「今ピッキングしていた薬品名」の上に、あえてボールペンや重しをポンと置いておく。
- 戻ったら一歩引いてリセット: 再開するときは、直前の記憶を過信せず、「どこまでやったか」を最初から確認し直す。

【エリアマネージャーからのアドバイス】
「どこまでやったっけ?」と思ったら、迷わずその薬品の調剤を最
4. 現場で起きたインシデント事例を分析する「ヒヤリハットノート」
皆様は「ハインリッヒの法則」という言葉をご存じでしょうか?
内容としては1件の重大事故の裏には29件の軽微な事故が存在し、軽微な事故の裏には300件のヒヤリハットが存在するという有名な法則です。

この法則をもとに、調剤室ではヒヤリハットの事例を分析し、その店舗でどのような原因でヒヤリハットが起きているのかを分析して防ぐのが有効です!
- 原因が医療事務起因の「処方入力ミス」「ピッキングミス」で起きているか
- 原因が薬剤師起因の「処方監査ミス」「調剤設計ミス」「統合鑑査ミス」「投薬ミス」で起きているか

実際に調剤室で起きたインシデントをノートにまとめて、定期的に調剤スタッフでディスカッションを行ないます。
この結果として、その店舗で起きる調剤ミスの傾向が把握でき対策を打つことができます。
5. 複数の目でリスクを止めよう「ダブルチェック」
皆様は複数の薬剤師が出勤、勤務している環境で「ダブルチェック」はしていますか?
先輩が怖くて頼みづらいから一人で鑑査から投薬までやってしまうタイプ・・・は要注意です!!
いきなりですが、「スイスチーズモデル」はご存じでしょうか?

これは、事故やエラーを防ぐための防護壁をスイスチーズの「穴」に見立て、複数の対策を重ねることでリスクを防ぐ考え方です。
- ダブルチェックをするメリット
→別々の個人がチェックを行なうことで先入観なく鑑査することができ、調剤ミスを防げる。
- ダブルチェックのデメリット
→人的なダブルチェックだけでは、同じ方法での確認となるため図のチーズの「穴の位置(弱点)が同じとなりリスクを防ぎきれない。
- 効果的な対策
→人だけでなく、調剤機器など異なる性質のチェックを組み合わせることで、穴が重なるのを防ぎ安全性を高めることができる。
まとめ:ミスを防ぐのは「注意力の高さ」ではなく「仕組み」
現場の薬剤師が調剤ミスを防ぐために実践すべき5つの工夫を振り返りましょう。
- 五感を使う「声出し指差し確認」(認知エラー防止)
- 人的思い込みによるミスをなくす「調剤機器」(データは嘘をつかない)
- 中断時は「完全リセット&目印」(作業再開時のミス防止)
- 現場で起きたインシデント事例を分析する「ヒヤリハットノート」(ハインリッヒの法則からヒヤリハットの撲滅)
- 複数の目でリスクを減らそう「ダブルチェック」(スイスチーズモデルにおける防護壁の強化)
これらはすべて、明日からの調剤で個人の意識に関係なく取り入れられる「仕組み」です。
調剤ミスを減らすことは、患者様の安全を守るだけでなく、あなた自身の薬剤師生命を守り、薬局全体の信頼を高めることに繋がります。
ぜひ、できそうな工夫から1つずつ、あなたの「お決まりのルーティン」に組み込んでみてくださいね。
皆さんの現場が、より安全で働きやすい環境になることを応援しています!


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